スクワットは、下半身の関節を屈伸させることで重量物を扱うトレーニングです。
下半身の関節を屈伸させる為に、股関節・膝関節・足首関節などを痛める可能性があります。
特に、膝関節においては「膝を前に出すと痛めるよ。」と注意喚起される程、痛める可能性が高い部位として知られています。
では、膝関節が痛いと感じた時に、どのようなポイントをチェックすれば良いのでしょうか?
また、そのポイントに該当した場合、どのようにして改善すれば良いのでしょうか?
今回は、そんな悩みを解決していこうと思います。
膝が痛い時のチェックポイント
はじめに、膝が痛い時のチェックポイントについて、お伝えします。
膝が痛い場合、それぞれの関節はどうなっているのか、どのようなフォームになっているのかなど、いくつかチェックポイントがあります。
股関節は十分に開いているか?
スクワット中、膝に痛みを感じる場合は股関節が十分に開いているかを確認してみましょう。
股関節が十分に開いていない場合、内側広筋・内転筋群の動員が弱まり、外側広筋・大腿筋膜張筋・臀筋群といった、股関節を外旋・外転させる筋肉を強く動員させる必要があります。
内側広筋・内転筋群の動員が弱まり、外側広筋・大腿筋膜張筋・臀筋群の動員が強まる状況では、内側側副靭帯(MCL)など内側に位置する膝関節周囲組織に負担が生じる為、膝の内側に痛みが発生しやすいと思われます。

股関節の開きが問題となる場合は、意識的に股関節を開くようにしてみます。
その前に、股関節が十分に開いた状態がどのような状態なのか、理解を深めましょう。
股関節が十分に開いた状態というのは、つま先と膝の向きが揃った状態を意味します。
つま先と膝の向きが合致する場合、膝関節周辺組織が効率的に動員される為に、膝に与える負荷を軽減させることができ、痛みを解消することができます。
ちなみに、股関節を十分に開いた際に、内側広筋・内転筋群といった太腿内側に位置する筋肉群の張り感や効き感がある場合は、普段は動員不足かも知れません。
しかし、意識的に股関節を広げることができない場合は、どうすればよいのでしょうか?
以上のトレーニングは、重りを持つ必要はありません。
この動作において大切なのは、正面を向き続けることと、股関節を開き続けることです。
あとは、ゆっくりと動作を行い、股関節がしっかりと動いていることを確認しましょう。
足裏外側は浮いていないか?
スクワット中に足裏が浮く、或いは、足裏全体で床を踏ん張れていない方は非常に多いです。
特に、足裏外側と言えるような、足裏でも小指側が地面から離れる方は数多くいます。
足裏外側が浮いて膝に痛みが生じる場合、ひとつは腓腹筋・ヒラメ筋の柔軟性低下、もうひとつは足首関節の可動性低下が考えられます。
腓腹筋・ヒラメ筋の柔軟性低下について
腓腹筋・ヒラメ筋の柔軟性が低下している場合、足首をスネに向かって屈曲させると、ふくらはぎに強い張り感を感じます。
ふくらはぎの強い張り感は、背屈と呼ばれる、足首をスネに向かって屈曲させる動作に制限を与えます。
背屈動作に制限がある場合、スクワットで屈んだ際に代償動作として、つま先を膝よりも外に開くことで安定性を得ようとします。
しかし、腓腹筋・ヒラメ筋の柔軟性低下によって、つま先を膝よりも外に開くことは、屈んだ際の足裏内側への負担増加に繋がります。
こうした足裏内側で重量を支えることが、足裏外側では地面を踏ん張れない、或いは、少し浮いてしまうような状態の要因となるのです。
こうした腓腹筋・ヒラメ筋の柔軟性低下にを解消するにはどのすればよいでしょうか?
腓腹筋・ヒラメ筋の柔軟性を回復させるには、学校では”アキレス腱伸ばし”とも言われるようなストレッチを行うようにしてみましょう。
これを続けるだけで、少しずつ変化は現れるでしょう。
足首関節の可動性低下について
腓腹筋・ヒラメ筋の柔軟性は十分でも、足首関節の可動性低下が原因で、足裏外側が浮く場合があります。
これは、距骨と呼ばれる足首関節に属する骨の動きが原因と考えられます。
距骨は、スクワットのように足首を背屈させる動作の場合、踵側に滑る必要があります。
ここで、簡単に背屈についても、説明しておきます。
距骨が後方に滑らずに前方に位置し続けている場合、背屈は制限され、スクワット中に踵が浮いたり、足裏外側が浮いてしまうような状態となります。
この距骨の滑りを補助しているのは、長母趾屈筋と呼ばれる踵付近に位置する筋肉です。

長母指屈筋は、ふくらはぎの深層筋膜の下に位置する筋肉であり、非常に強力な筋肉でもあります。
長母趾屈筋が原因として考えられる足首関節の可動性低下を考えるにあたり、抑えておきたいのは長母趾屈筋の機能です。
長母趾屈筋の機能は、底屈・内反・母趾屈曲の3つです。
ここに挙げた機能を理解する上で大切なことは、底屈は背屈とは反対の動作だということです。
スクワットにおいて、踵が浮いたり、足裏外側が浮くようなフォームの場合は、長母趾屈筋が緊張しているが為に、常に底屈させるような動作を引き起こしていると考えられます。
長母趾屈筋の緊張は距骨の後方への滑りを妨げる為に、足首関節の背屈動作が制限されます。
その為、スクワット中に足裏外側が浮くような形となるという訳です。
では、長母指屈筋の緊張をほぐすにはどのようにすれば良いでしょうか?
このように足首関節の背屈-底屈を繰り返す動きが有効です。
また、裸足で上記の動きを行う場合は、膝を前に出した際に足の親指を返すように引っ張り上げることで、更にストレッチを行うことができます。
膝を前に出しすぎていないか?
メディアやSNSでは、スクワットでは膝を前に出してはいけないと言われることが多くあります。
しかし、これは程度の問題であり、膝を出しすぎると膝を痛めてしまうよ、ということです。
このチェックポイントを振り返る前に、どのようなフォームだと”膝が前に出ている”と認識してよいのでしょうか?
膝が前に出ているとは、上記動画のようなフォームです。
上記の動画にあるようなフォームは膝を痛める原因となりますが、それはなぜでしょうか?
スクワットにおける主動筋は、大腿四頭筋と呼ばれる筋肉です。
また、主動筋だけでなく協働筋として、大臀筋、ハムストリングなどの筋肉が存在します。
膝を前に出しすぎるあまり、膝を痛めてしまう場合は、この主動筋と協働筋の働きがチグハグになっていると考えられます。
スクワット時に、大きく膝を前に出して行う場合、最も働きが大きいのは主動筋と呼ばれる大腿四頭筋です。
この大腿四頭筋、スクワット動作中は筋繊維が収縮することで力を発揮しようとします。
特に、膝を大きく前に出しながら屈む動きでは、大腿四頭筋は強く収縮することになります。
そして、肝心なのは協働筋である大臀筋やハムストリングの収縮は、少ない量に限られるということです。
大腿四頭筋の収縮は十分にも関わらず、大臀筋やハムストリングの収縮が不十分な場合、大腿四頭筋の収縮によって関節が受ける影響は強くなります。
主動筋と協働筋の不釣り合いな収縮は、膝関節内への圧力を高めます。
この状況が続くと、軟骨の擦り減りの助長や、関節同士の隙間が狭くなることで痛みが発生する場合があります。
もしも、膝を大きく前に出してスクワットを行っていた場合は、すぐにでも、正しいフォームを身につけるようにしましょう。
先ずは、グッドモーニングなどで骨盤の動かし方を身につけたら、それにスクワット動作を組み合わせてみましょう。
また、プレートやダンベルなどで軽い重量を手に持ち、肘を軽く曲げる程度に腕を伸ばして持ち、スクワットを行うことでも安全にスクワットを行う感覚を養うことができます。
ひとつずつ解決しよう
膝の痛みは、何もスクワット動作が引き起こすだけではありません。
これまでの生活習慣によって増えた体重や、若い頃に負った怪我など、不確定要素がいくつも存在します。
そうでなくても、スクワット中に膝が痛む原因は、それぞれ違います。
もしも、痛みがなくても、これまでに挙げた『股関節は十分に開いているか?』『足裏外側は浮いていないか?』『膝を前に出しすぎていないか?』など、考えられる要素はいくつもあります。
膝が痛む原因がひとつだけの場合もありますが、複合的に幾つもの要素が重なっている場合もあります。
こうした原因と思われるものを、ひとつずつ解決することで、自ずと安全なスクワットに近づいてくるでしょう。
まとめ:自分のフォームを知ろう
膝が痛いと思った時の確認事項と改善方法について、今回は、解説してきました。
膝が痛いと思ってもフォームを知らなければ、改善することはできません。
ご自身のフォームを知れば、自ずと見直すべきポイントは見えてくる筈です。
ポイントが分かれば、少しずつ改善を図っていきましょう。
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