トレーニング初心者にとって、ベンチプレスにおける課題がいくつかあります。
その中でも、バーベルを腕で挙げてしまう癖は直した方が良いとされる、癖のひとつです。
今回は、なぜ、ベンチプレス中はバーベルを腕で挙げたくなるのか?
そして、どうしたらバーベルを腕で挙げずに、カラダ全体で挙げられるようになるのか?
といった、課題の解決に向けてまとめていきます。
ベンチプレスについて
ベンチプレスは動画にある通り、ラックからバーベルを外し、肩前方のスタートポジションから胸部へバーベルを下ろし、大胸筋を主動筋として収縮させながらバーベルを挙上する種目です。
ベンチプレスに関する記事が、いくつかあるので気になる方は以下もご覧下さい。
【トレーニング】ベンチプレスにおける安全なバーベルの軌道について
【トレーニング】ベンチプレスフォーム習得の為に、肩甲骨の”内転下制”を知ろう
【トレーニング】トレーニングって、どの種目をやったらいいの?
ベンチプレスフォームについて
ベンチプレスフォームについて、おさらいしましょう。
- 両足-臀部-背中上部-後頭部を床、あるいはベンチにつけるように仰向けになる
- 腹圧を高めて、腹部を固定したら、ラックからバーベルを外しスタートポジションをつくる
- スタートポジションから胸部へバーベルを下ろす
- バーベルが胸部に触れたら、下半身を踏ん張り、背中でベンチを押し、胸部を収縮させることでバーベルを挙げる
- バーベルをスタートポジションまで挙げきったら、ラックに戻す
ベンチプレスフォームを文字起こしすると、このような動作になります。
先の動画では、上半身部分しかお見せしていないので、改めて全体像を写した動画を添付しておきます。
腕でバーベルを挙げる癖について
こうしたベンチプレスに取り組み始めた方に散見されるのが、腕でバーベルを挙げる癖です。
勿論、どんなに綺麗なフォームを習得しても、腕でバーベルを支えている以上、腕の力を使わない訳にはいきません。
しかし、本来のベンチプレスは、腕を鍛えるのではなく胸を鍛える、あるいは背中や足を使って挙げる種目です。
“バーベルを腕で挙げる”とは、どういうことか?
「バーベルを腕で挙げるイメージが湧かない。」ということは、この動画をご覧下さい。
前項に添付した動画と比べて、胸の張り出しが弱く、肩が前に出ていることが分かります。
また、バーベルを挙げ切った時に、ブレやすくなっている点も大きな違いです。
スタートポジションからボトムポジションへの距離も長く、腕で支えることが増えるので、上腕から前腕にかけて、非常に疲れやすいフォームです。
なぜ、腕で挙げたがるのか?
では、なぜ、腕で挙げたがるのか?について、考えていこうと思います。
1.正しいフォームだと思っている
ベンチプレスを初めてチャレンジした際に、「これは、腕の種目ですか?」と聞かれることがあります。
前述したように、ベンチプレスは胸・肩・三頭筋の種目です。
しかし、バーベルを空中から胸に下ろし、また元の位置に戻すという動作だけでみると、腕でバーベルを操作しているように思えます。
そして、それが正しいフォームなのだろうと錯覚している方が、いらっしゃいます。
これでは、肩を痛める、筋肉を追い込みきれないなどの問題を生じます。
一度、ご自身のフォームを撮影したり、鏡でみながらベンチプレスを行うのがオススメです。
正しいフォームか否かは、カラダが教えてくれるので「挙げられる!」ではなく、「挙げやすい!」という感覚を確かめましょう。
2.ベンチプレスが怖い
ベンチに仰向けになり、重量物をカラダの前に持ち上げることに自然と恐怖を感じる人は多いです。
20kgもあるバーベルを落とせば、怪我をするリスクは高いですし、そんな重量物を落としたくないと思うのは当たり前ですよね。
だからこそ、腕でバーベルを強く握る、あるいは動作を腕主体で行うことで重量物をコントロールしようと努めてしまいます。
何度か扱うことができれば、こういった恐怖心を払拭することができますが、ベンチプレス開始直後は恐怖心が拭えずに、腕が疲れてしまう方も多いです。
セーフティーバーを活用する
ベンチプレスに対する恐怖心を克服するには、セーフティーバーの活用が不可欠です。
セーフティーバーはあなたを怪我から守る優れたアイテムです。
もしも、バーベルを落としたとしても、顔や首を守るのがセーフティーバーの役割です。
動画のように、ボトムポジションに落としてからバーベルを挙上しようとしても上がらない場合には、ゆっくりと首の方に動かしたり、胸を引っ込めてセーフティーバーでバーベルを受けるようにしましょう。
3.ベンチプレスを背中で押す感覚が掴めない
これまではメンタル的な理由を挙げましたが、ここからはテクニック的な理由を挙げます。
まずは、背中でベンチを押す感覚が掴めないということです。
ベンチプレスなどのトレーニングは、すべて物理学です。
これについて話を掘り下げると多くの時間が必要になるので、今回は割愛しますが。
ベンチプレスの場合は、背中でベンチを押す力と反対の力がバーベルに加わることでバーベルが胸から空中へと挙がります。
これを理解できない方が非常に多くいますが、少しでも理解できればベンチプレスは飛躍的に向上するでしょう。
動作中にこの感覚を感じられるか否かは、日頃からベンチプレス中に背中に意識を向けられているかどうかが鍵となってきます。
軽い重量で調整しよう
背中でベンチを押す感覚は、余裕を持って扱える重量で調整を行いましょう。
ウォーミングアップ中は、カラダを温めるだけでなく、こうした体感覚の振り返りに努めましょう。
ゆっくりと動作を繰り返すのも良いですが、挙上スピードを上げて、爆発的に背中で押すようにウォーミングアップを行うのも良いでしょう。
4.足で床を押す感覚が掴めない
さて、背中でベンチを押すとお伝えしましたが、その前に足で床を押す感覚も必要になります。
実は、足で床を押すことで、強く背中でベンチを押すことが可能になるのです。
これも作用反作用の原理です。
どうしても上半身のみでベンチを押そうと思っても、力が入らないとか、感覚が分からないという風に、難しい場合が多いです。
それが、足で床を押すことで、床を押した反力が背中に伝わります。
そうやって伝わった床からの反力が、背中でベンチを押す動作をアシストしてくれます。
ベンチを押す力が強くなればなるほど、フォームは安定しますし、ボリュームを増やすことができるでしょう。
バーベルを挙げるタイミングで踏ん張る
足を踏ん張るタイミングが分からない方は多いです。
その場合は、足を踏ん張る練習を、ウォーミングアップで行う重量設定で行います。
バーベルをボトムポジションに置いたら、足で床を踏ん張り、それと同時にバーベルを挙げます。
この時に、床からの反力が背中に伝わり、ベンチ上で上半身が少し動いた感覚があれば踏ん張れている証拠です。
少しずつ重量を増やしながら、この動作が行えるように、練習しましょう。
5.肩甲複合体が上手く動かせない
さて、背中でベンチを押せるにも関わらず、肩関節や肩甲骨が上手く動かなければ、腕で挙げる癖は解決しないでしょう。
ベンチプレスでは、バーベルをボトムポジションに下ろした際に、ある程度は肩甲骨が中心に寄らなければいけません。
これは、人間のカラダの構造上、安全にベンチプレスを行うため、併せてベンチプレス中の土台を安定させるには重要です。
この肩関節が上手く動かない、肩甲骨が上手く動かないというのは、肘でバーベルをコントロールするに繋がるので、腕でバーベルを挙げることに繋がります。
肩甲複合体の動きについて
肩関節-肩甲骨は、前述したリンクにもあるように、内転下制の動きを取ります。
これは、背中を中心に寄せて、そのまま肩を下に落とす動きです。
この動きをキツく行うと、ベンチプレスの動きが窮屈になるので注意しましょう。
肩関節は、自然な関節の動きに逆らわないように動かします。
イメージは、ボトムポジションの時に前腕が床と並行な位置まで動かしましょう。
もしも、この時に前腕が床と並行でない、あるいは関節や筋肉が窮屈に感じる場合は、手幅や肩甲骨の寄せ具合、脇の開き具合を調整しましょう。
あるいは、こうしたストレッチを行うのも有効です。
肩甲骨付近、肩関節付近の筋肉を伸ばして、普段から関節が動かしやすくなるように準備しておくことは怪我を減らす意味でも重要です。
必要なストレッチは、その人によって違うので、ご自身で色々と探して、試してみるのも良いでしょう。
6.手首を返しすぎている
バーベルを握った際に手首を強く返していると、前腕に力が入ります。
動作中は、自然と力が入った部位を意識してしまうので、これは腕でバーベルを挙げる癖にも繋がります。
また、手首で重量を受けることにも繋がるので、重量が増えると手首を痛めやすくなるので、怪我の観点からも注意が必要です。
バーベルは軽く握り力まない
手首を強く返しても、バーベルの軌道は安定しません。
手首については、骨の上にバーベルを乗っけるようなイメージで、その為には、ある程度手首を起こすことが必要です。
掌の溝にバーベルを当てるようにすれば、自ずと手首は返らなくなるので調整方法としてオススメです。
また、力まないようにバーベルは柔らかく指先を添えるようにしてみましょう。
バーベルは掌ではなく、骨で支えることが重要です。
7.重量設定が合っていない
そもそも重量設定が合っていないというのも挙げられます。
軽すぎる場合には腕で上げやすいですが、フォームを修正するには丁度良いので、あまり深く考える必要ありません。
これは、重量を上げれば良いからです。
しかし、重量設定が重すぎる場合には、先ほどお伝えした恐怖心が顔を出すことで腕でコントロールしやすくなる方もいます。
この課題が思い当たる場合には、基本的には重量オーバーの場合は多いと思うでの、重量設定を軽くして、1セットあたり8-15回程度となるように調整してみましょう。
8.ベンチプレスに慣れていない
そもそもベンチプレスに慣れていなければ、自分にとって最も動かしやすい部位を使ってバーベルをコントロールする他、ありません。
それが大抵の人の場合は、腕ということです。
どんなこともそうですが、初めから一定の動きができる場合は少ないでしょう。
どんなことにも慣れが必要です。
慣れる過程で、腕で挙げることが非効率だと気づくことができれば、ベンチプレステクニックは上がるかもしれません。
慣れていない場合には、数をこなす他ありません。
しかし、闇雲に数をこなすのではなく、毎レップ毎レップを考えながら、感じながら行うことが必要です。
これは、文章で読むよりも実践が難しいですが、トレーニングの上達には欠かせない取り組み方だと言えます。
カラダでバーベルを挙げる練習
バーベルを握ってベンチプレスを練習する前に、背中で押す、足で押す感覚を身につけましょう。
以上は、どれもバーベルを持たずに行う練習方法です。
ベンチに仰向けになって行う方法では、バーベルを握らずに掌をボトムポジションまで下ろし、足で踏ん張り、背中でベンチを押して、スタートポジションに掌を戻すようにします。
壁に寄り掛かって行う方法では、半足から一足分、壁から足を離して背中を壁に当てるようにします。
肘を引いてから伸ばす際に、足を踏ん張り、背中で壁を押すようにしましょう。その際に、掌はスタートポジションに戻るようにコントロールします。
その都度フォームをチェックしよう
ベンチプレスに限らず、フォームは毎日変わります。
これは、本当に些細な違いですが、毎日変わります。
ベンチプレスに関して言えば、前は腕を使わずに挙げられたけど、今回はダメだ…というような具合です。
だからこそ、ウォーミングアップの段階で毎回のフォームをチェックするようにしましょう。
まとめ:ベンチプレスを楽しもう
ベンチプレスは腕ではなく、カラダ全体で行う種目です。
こういったフォーム習得、フォーム修正を含めて、ベンチプレスを楽しんでもらえたらと思います。
何事も楽しむからこそ、楽しんでいるからこそ上達しますし、これはトレーニングでも変わりません。
ご自身の癖に対して、真摯に向き合い、更に満足のいくフォームで、楽しんでトレーニングできれば嬉しいです。
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