【少し詳しく知りたい方へ】炭水化物って、何ですか?

さあさあ、いよいよ、三代栄養素も最終回。
炭水化物について、少しばかり深掘りしていきます。
前回までの流れを汲んでいただければ、流れは変わりません。
以前に、ご紹介した栄養摂取における記事からタンパク質の記事、脂質の記事にもあるように、振り返りから始めて、そこからつらつらと少し詳しい内容をお伝えして参ります。
新たな知識や情報など、読者の方にとって良き記事となれば幸いです。
炭水化物(前回の振り返り)
炭水化物というのは、糖質と食物繊維の総称でございます。
併せて、炭水化物の働きは、主要なエネルギー源であるということです。
加えて、炭水化物が体内に入った時に、インスリンというものが分泌されます。
このインスリンによって、血糖値は抑えられ、タンパク質の合成などが促されるという仕組みでございます。
こうした炭水化物が減ってしまうと、エネルギー不足に陥ります。
加えて、集中力の低下にも影響が出るので、生活する上でも支障が出る可能性がございます。
そんな炭水化物が多く含まれる食材は、穀類(米・パンなど)/果物(全般)/一部の野菜(芋類)/砂糖/菓子でございます。
ここまでが、前回の振り返りでしょうか。
さて、ここから少し掘り下げていきますが、今回は糖質についてのみ扱います。
食物繊維については、またの機会にさせてくださいませ。
糖質
炭水化物は、糖質と食物繊維に分類されるとお伝えしました。
そして、その糖質もまた、細かく分類されるという訳でございます。
さて、その分類というのが以下でございます。
- 糖類
単糖類/二糖類(オリゴ糖に含む)/糖アルコール
- 多糖類
でんぷん
糖質というのは糖類によって構成されていまして、その糖類もまた、細かく区別することができるわけでございます。
そして、単糖類、二糖類といった糖類の分類から、また更に細かく分けることができるのです。
糖類
では、そもそも糖類とは何なのかについて、お伝えしなければいけませんね。
糖類というのは、前述いたしました単糖類、二糖類、糖アルコールの総称でございます。
また、それぞれから細分化されるので、ここからはそれぞれの糖類についてお伝えいたします。
単糖類
まずは、単糖類からです。
単糖類は、糖類に分類されたものの中で、最も小さい糖類でございます。
後述する糖類は、すべて、この単糖類の組み合わせ方や組み合わさった数によって規定されています。
さて、そんな単糖類の性質は甘みがあることと、白さでしょう。
そんな単糖類を代表する物質が、グルコース、フルクトース、ガラクトースです。
グルコース
グルコースは、別名、ブドウ糖と呼ばれる糖類です。
薬局やスーパーに行けば、ブドウ糖補給用タブレットなどが市販されていますが、それらはグルコースそのものでございます。
グルコースは、有している化学構造がシンプルな為、多くの分解を必要としません。
その為、非常に早く吸収され、栄養として私たちの身体へと作用します。
以前に、糖質の働きは、エネルギー源であることをお伝えしました。
その中でも、グルコースは脳へのエネルギー源として働くことが知られています。
私たちは疲れてくると、「疲れたから、甘い物でも食べよかな。」と、チョコレートやクッキーなどを口にします。
これは、グルコースを摂取することで、セロトニン、別名”幸せホルモン”と呼ばれるホルモンの生成を助けてくれます。
勿論、疲れた時には体力も消耗している訳ですから、エネルギー補給の為にと菓子類を召し上がることは理に適っています。
それだけでなく、精神の消耗を助けることも、グルコースを含めた糖類が司っているというのは驚きではないでしょうか。
フルクトース
フルクトースは、別名、果糖と呼ばれる糖類です。
こちらも、グルコース同様、構造はシンプルでございます。
細分化しようとすれば、構造上の違いはございますが、ここでは割愛いたします。
そんなフルクトースは、果物、野菜、蜂蜜など、自然的な甘みを感じる食材に多く含まれています。
清涼飲料水にも、果糖ぶどう糖液糖と呼ばれるような異性化糖と呼ばれる状態で用いられています。
そんな、フルクトースはフルクトースそのもので吸収されることはございません。
吸収された後、前述したグルコースが代謝される過程で生成される化学物質に変換され、その後、体内で代謝されます。
糖化
ここで、話題に上がるのは”糖化”と呼ばれる現象でしょうか。
“糖化”というのは、”メイラード反応”と呼ばれる化学反応によって、特定の化学物質が生成される現象でございます。
このメイラード反応というのは、食材を加熱調理した際に、本来の色味から褐色へと移行いたしますね。
その際に、食材内の糖成分とアミノ酸成分が脱水や脱アルコールを伴いながら結合する、という反応が起こる訳でございます。
これを、メイラード反応と呼びます。
これによって、新たに生成された物質が身体に悪影響を及ぼしますよ、という扱われ方をされているのが糖化でございます。
そこで、この糖化の主犯格として担ぎ上げられるのがフルクトースでございます。
ただ、こういう主語の大きな謳い文句というのは大抵、どこかに穴があるものでしょう。
或いは、化学的根拠に纏わる話は分かりづらくていけない。
分かりづらいものは、大衆が理解を拒みますから、その事象は曖昧に、拡大解釈される危険性がございます。
このフルクトースも、その被害者のひとりでございましょう。
実際には、清涼飲料水に代表されるような異性化糖と呼ばれるフルクトースを非常に多く含んだ化学物質が、この糖化を促進させることに一役買っていること、それが蔓延っている社会構造というのが危険視されなければいけない、というものでございます。
フルクトースには、糖化の話が付き纏います。
しかし、野菜や果物には食物繊維もあれば、ビタミン・ミネラルも含みます。
フルクトースを土台に、様々な栄養を摂取することが可能でございます。
また、野菜や果物のみからフルクトースを摂取する場合と、清涼飲料水の摂取と同等にフルクトースを摂取するのでは、後者の方が簡単なのは日を見るよりも明らかでしょう。
長くなりましたが、一旦、フルクトースについてはここで終わりにしたいと存じます。
ガラクトース
さて、話は変わって、お次はガラクトースでございます。
ガラクトースと言うのは、ラクトース、別名”乳糖”と呼ばれる糖類を構成する要素でございます。
以上のことから、ガラクトースは乳製品に多く含まれております。
ガラクトースの特徴として面白いのは、その働きでしょう。
脳を始め、神経を介する組織にはガラクトースが”鎖”という形で介入しております。
この鎖、実は、かなり重要でして。
ガラクトースをはじめとする”糖鎖”というのは、細胞の保護、タンパク質の管理、薬の運搬、細菌やウィルスの感染経路、などの働きがございます。
最後の感染経路というのは、表面的には不要な機能かも知れません。
ですが、この反応があればこそ、特定の糖鎖に作用した感染被害を抑える薬の作成にも繋がっております。
単糖類と言っても、こういうのを知ると馬鹿にできませんね。
二糖類(オリゴ糖に含む)
ここからは二糖類について、お伝えいたします。
二糖類というのは、単糖類が2つ結合して出来た糖類でございます。
これは、想像に難くないかなと思います。
また、単糖類が10個程度まで結合した糖類を、オリゴ糖と分類します。
ここでは、その中でも二糖類に絞ってお伝えいたしますね。
マルトース
はじめに、マルトースについてお伝えいたします。
マルトースというのは、別名”麦芽糖”と呼ばれる二糖類でございます。
グルコースが2つ結合したものが、マルトースと呼ばれております。
私たちが良く目にするのは、水飴の形でしょう。
そんなマルトース、ひとつ特徴がございます。
実は、マルトースそのものはインスリンの分泌を促しません。
ですが、甘みもあり、構造上安定していることもあって、医薬品に活用されたり、保水の目的で化粧品にも使用されています。
水飴が医薬品や化粧品にも活用されているのは、驚きですね。
この表現だと誤解を招くでしょうが、まあ、水飴そのものが使われていないのは大抵の人は分かると思うので隅に置いておきます。
スクロース
スクロースは、別名”ショ糖”と呼ばれております。
こちらは、私たちにとって非常に馴染み深い砂糖の主成分でございます。
グラニュー糖、上白糖、黒糖、甜菜糖、三温糖など、砂糖にも様々な種類がございますが、それぞれショ糖の含有率というのは違います。
それによって味わいも変わりますし、形も違うようでございます。
その為、溶媒に溶かした際に、その溶媒の粘性にも違いがあるとのことです。
そんなスクロース、これはグルコースとフルクトースが1つずつ結合した二糖類でございます。
その為、分解された時の生理反応とは、グルコース、フルクトース、それぞれと同様でございます。
砂糖そのものは、グルコースを手早く摂取するには非常に便利な食品です。
勿論、過剰摂取になりやすい食品ですので、扱いには注意が必要ですが、スポーツをされる方、力仕事の方などは、積極的に活用されるのも良いでしょう。
ラクトース
お次は、ラクトースです。
こちらは、ガラクトースにて少し登場しましたね。
ラクトース、別名”乳糖”は乳製品に多く含まれる二糖類でございます。
こちらは、ガラクトースとグルコースが組み合わさったという特徴がございます。
その為、体内に入った時の反応というのは、それぞれの反応と同様でございます。
進化の過程において、脳が発達したヒトは、肥大化した脳を活用すべくグルコースの摂取を積極的に行いました。
甘味を感じる食材はグルコースを摂取することに繋がる為、脳は甘味を良しとしました。
それだけでなく、牛の家畜化に成功したことで、牛乳の生産にも成功します。
本能によってか、マーケティングの妙か分かりませんが、牛乳に代表される乳製品は効率良くグルコースを摂取できる食品として普及いたしました。
稲作等も含めて、安定的に脳へのエネルギー供給を模索してきた人類の結果というのが、こうして現代に集約されているかと思うとなんだかワクワクいたしますね。
話が逸れましたが、そう言えば、このラクトース、代謝の過程で特定の酵素を必要といたします。
しかし、この特定の酵素が不足している場合、上手く代謝できずに下痢や腹痛を引き起こす要因となってしまいます。
運動会や試合の前にも、注意喚起されていた記憶が蘇ります。
もしも、乳製品を摂取して下痢等の症状が発生する場合は、無理に召し上がる必要はございません。
タンパク質の観点からも、他の食材から摂取は可能ですので、ご自身の体調とご相談の上、召し上がってみてください。
糖アルコール
糖アルコールというのは、あまり馴染みのない名称かと思います。
ですので、まずは糖アルコールの説明をいたします。
糖類には、いくつかの〇〇基と呼ばれる原子の集まりがございます。
この〇〇基の配置、順番によって、糖類の種類が変わります。
その中でも、糖類には還元基というものがございます。
還元基とは、相手となる化学物質から酸素を奪うことができたり、反対に、相手に電子を与えられるものです。
アルデヒド基やカルボキシル基というのが、それに該当いたします。
そして、このアルデヒド基やカルボキシル基を糖類は含んでおります。
これらに、水素が加わることで、前述した還元基がアルコール基へと変換されます。
この変換された糖類のことを、糖アルコールと呼ぶ訳でございます。
そんな糖アルコールの中でも有名のなのはキシリトールではないでしょうか。
良くガムなんかで、目にすることがあるかと思います。
この他にも糖アルコールはございますが、まずは、こういうものだと思っていただければ幸いです。
多糖類
さぁ、お次は多糖類でございます。
もうお腹いっぱいですよね。
自分も、お腹いっぱいです。
多糖類というのは、多くの単糖類が結合した糖類でございます。
種類も豊富なので、細かくは割愛いたしますが、有名なものにデンプンがございます。
多糖類にはいくつかの特徴がございまして、付与された液体に粘性を付加したり、液体を固めるまでにすることも可能です。
一般的に、多糖類は天然由来である場合が多く、化学物質としても安定した状態を保ちやすいのです。
その為、ソースやジャム、菓子に活用されたり、化粧品やインク、接着剤にも使用されております。
非常に使い道のある優秀な糖類ですね。
糖質の用量
糖類の分類なんて、どうでも良いんだよ。
要は、どれだけ摂ったら良いかってことだろ。
勿論、その通りでございます。
まあ、それだけでは無いんですけども。
さてさて、糖質の用量についてでございますが、厚生労働省の報告では1日の総摂取エネルギーの50〜65%程度が目安量と言われています。
これ、数字にすると意外と摂取できると歓喜される方が多いんでございます。
そもそも、糖質というのは人間にとって必要な栄養である訳ですから、無闇矢鱈に糖質だけを減らして痩せようなんてのは、少々無理がある訳でございます。
低糖質食に対する意見はさておき、糖質というのは、しっかりと摂取しなければいけないものということを理解していただければ嬉しいです。
まとめ
いかがでしたか。
炭水化物は、糖質と食物繊維に分かれ、糖質の構成要素として糖類がございます。
その糖類も、単糖類、二糖類(オリゴ糖に含む)、多糖類、糖アルコールに分類できます。
それぞれに、固有の働きがございますが、基本的に共通しているのはグルコースを有し、甘みがあるという点でございます。
1日の中で、50〜65%は糖質を摂取することを意識して、召し上がってみてください。
参考文献
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所:https://www.nibn.go.jp
研究ネット produced by WDB:https://www.wdb.com
日本応用糖質科学会:https://jsag.jp
健康栄養支援センター:https://hns-japan.com
独立行政法人農畜産業振興機構:https://sugar.alic.go.jp
化学と生物:https://katosei.jsbba.or.jp
弘前大学大学院医学研究科:https://www.med.hirosaki-u.ac.jp
化学のグルメ:https://kimika.net
化粧品成分オンライン:https://cosmetic-ingredients.org
布施雅昭著『糖アルコールの特性と利用』:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh1994/10/3/10_3_2/_pdf
多糖類.com:https://www.tatourui.com
日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html

